景気予測お天気マーク
このシグナルは、現状から今後6ヵ月間の見通しを短評。
|
年間商品販売額 |
事業所数 |
従業者数 |
2012年 |
3,294,229百万円 |
4,364 |
42,482人 |
2014年 |
3,850,267百万円 |
4,579 |
46,864人 |
2016年 |
4,286,266百万円 |
4,364 |
47,657人 |
資料:総務省『経済センサス-活動調査』2018年3月公表(菓子・パン類卸売業)
1.総務省『家計調査年報』(2022年5月公表)によると、2021年の世帯の1カ月の消費支出は23万5,120円(前年比実質1.0%増)、パンは2,082円(同比0.4%減)、菓子類は5,198円(同比2.1%増)となった。総需要では、コロナ禍の影響はほとんどなかったといえる。
他の項目と比較すると、1カ月の食費が6万2,631円(同比1.0%減)のなかで、パンは米1,366円(同比4.9%減)、麺類1,257円(同比4.8%減)より多く、菓子類は調理食品9,910円(同比4.5%増)、外食8,653円(同比2.7%減)に続く第3位にあり、果物2,523円(同比2.1%増)の倍以上あった。
2.2020年2月頃から始まった新型コロナウイルスの感染予防対策は、政府の緊急事態宣言・まん延防止等重点措置を経て、全国で毎日数千人の新規感染者が出ているものの、重症者数や死亡者数が減っていることから、2022年5月22日には東京都が発していたリバウンド警戒期間も終了する。2年以上にわたり需要が激減していた外食産業や観光業への需要戻りが期待される。そこに食品を供給している菓子・パン卸売業にも需要先の変化を先取りする対応が求められる。
コロナ禍に伴い、東南アジアでの鶏肉やエビの生産に停滞が発生している。たとえば、タイでは周辺国からの外国人労働者が減り、鶏肉処理工場の操業に支障がでている。ベトナムのエビ加工業でも納期の遅れが発生している。また、世界中で物流コンテナが不足していて、グローバル物流に支障が出ている。このため食品メーカーで原材料調達の困難が発生し欠品の恐れもあるため、卸売業も対応を迫られる。
3.食品業界を原材料費高騰の嵐が襲っている。米国の金利改定に端を発した円安は、輸入食材の価格と光熱費の原価を急速に押し上げている。また、昨年の米国やカナダでの小麦不作に端を発した輸入小麦の政府売り渡し価格の上昇は、菓子・パン業界を直撃している。さらに2022年2月24日にロシア連邦が隣国ウクライナに侵略を開始して今なお停戦合意の見通しがない(執筆時点)。ウクライナは大きな食料供給国で、ひまわり油・とうもろこし・小麦・菜種を輸出しているが、貿易港を封鎖されて輸出ができなくなっている。また、ロシア連邦もエネルギー資源と食料の供給国であるが、今回の軍事侵攻の経済制裁により貿易が止められている。この影響は今後の国際的な小麦価格や食用油価格にでてくる。食品の販売価格が1%上昇すると販売量が0.3〜0.4%減少するという試算がある。製造業からの値上げ要請をどのように捌き、小売店に伝えていくかは、卸売業の腕の見せ所である。
4.キャッシュレス販売機能のあるPOSレジの普及が急速に進んでいる。また、人工知能(AI)を活用した需要予測は実用段階になり、組み合わせて発注量の調整をするシステムの開発も進んでいる。また、個人でも小さな商店でも始められる新しいECサイトシステムでの起業が続々と始まっている。このようなIT化は、引き続き重要な要素である。小売店への情報提供や受発注システムの更新について、最大の関心と対応を進めておくことが必要である。
|
食パン |
菓子パン |
その他のパン |
学給パン |
合 計 |
2019年 |
597 |
408 |
219 |
24 |
1,248 |
2020年 |
607 |
415 |
222 |
21 |
1,265 |
2021年 |
578 |
416 |
224 |
24 |
1,242 |
資料:農林水産省『2021年度食品産業動態調査』
|
米菓計 |
ビスケット計 |
合 計 |
2019年 |
222 |
252 |
474 |
2020年 |
219 |
253 |
472 |
2021年 |
215 |
258 |
472 |
資料:農林水産省『2021年度食品産業動態調査』
消費者は信頼のブランドと品質、日付にこだわり、低価格とおいしさを求めていることに対応して、安全・安心を第一に、基幹商品を中心に低糖質といった健康志向の新商品や、こだわりの差別化商品、値頃感ある付加価値商品やボリューム感ある商品を提供しながら模索が続けられている。
ポテトチップスなどの油脂分の多い商品は、他より賞味期限が短く、より鮮度管理が必要である。在庫を減らし、売れ残りを防ぐために、米国では伝統的にスナック類にはメーカーのセールスドライバーが直接小売店に配送するダイレクト・ストアー・デリバリー(DSD)が採用されている。1970年代にスナック類が日本市場に参入したとき、外資系メーカー等はDSD方式こだわったが成功せず、日本の菓子卸流通のネットワークを持つ日本メーカーが初期の市場優位を確立した。
(1)商品仕入れの良否
何を、いつ、どこから、どれだけ、どのように、受注(販売)するかを計画しているか。
(2)販売する商品の種類
販売時期・販売先・販売地域・販売数量・販売価格・販売予定額・販売方法・販売経緯・取引条件・収益予定額・販売投下額などを検討して受注計画を行っているか。既存、新規小売業者からの電話受注、地域担当販売員の出張開拓など。また、POSの利用をしているか。
菓子・パン業界は、原料産地・メーカー・大手総合食品卸売業者・菓子類専門卸問屋・各種食料品卸問屋・百貨店・量販店・スーパーマーケット・小売商店・消費者といった重層的な流通体系である。その要に菓子・パン卸売業がある。
1990年代から2000年代にかけて、「新取引制度」の導入が進んだ。これにより、この複雑な日本型タテ割・多段階流通システムが改革されると考えられていた。しかし現在は、サプライチェーン・マネジメントを行う卸売業の価値が定着し、メーカーと小売店が商品企画や受発注で問屋を経ずに直接取引した場合でも、伝票だけは問屋を通す「帳合」が一般的である。
1960年代、「流通革命」という言葉とともに、「問屋無用論」が提起された。メーカーは代理店や特約店制度をつくり、建値制やリベート制で管理して流通の合理化を図った。これを第一次流通革命という。
1970年代、総合スーパーマーケットやコンビニエンスストアが台頭し、大規模な購買力を背景とした小売業主導型の流通経路が拡大した。メーカーと小売店との間で、流通経路の主導権争いで、更なる流通合理化が進んだ。これを第二次流通革命という。
1980年代後半、メーカーと卸売業・小売業が互いのコア・コンピタンスを発揮する協働活動の機運が高まり、1990年代に取引先から「取り組み先」を選別する系列化が始まった。多くの小売店がひとつの卸売に集約した取引で、POSデータ共有による統一業務支援・一括物流・卸本部スタッフによる情報支援・店舗の棚割り表管理支援を期待した。
小売業から選ばれなかった卸売業は消滅し、大手総合食品卸売業に取引が集中した。卸売業の販売額は、1991年に最高となり、565兆円(経済産業省「商業統計表」)である。
2000年代以降現在は、再び小売店が仕入先卸売業を複数化している。これは小売店が、卸売業間の競争による仕入原価引き下げを期待し、かつて集約した卸売業者からの指導内容を学び終えたことの表れでもある。
1.需給結合機能: 生産コストが低い場所にあるメーカーと、消費者の近くにある小売店の場所的な隔離を解消する。
2.情報伝達機能: 消費者の要求を代弁する小売店の情報をメーカーに伝え、メーカーの製品開発情報を小売店に伝達する。
3.金融機能: 製品が消費者に購入される前に、メーカーに代金決済することで、メーカーが金融機関から融資を受けなくて済むようにする。
4.リスク分散機能: 製品が流行遅れ等で売れなくて代金回収できなくなるリスクを負担する。
5.物流機能: メーカーから大量に仕入れた製品を、輸送・保管・包装加工・仕分けして小売店に配達する。
6.アソートメント機能: 消費者目線で売れる商品を探し出し、メーカーの販路を開拓し、小売店に紹介する。
7.リテールサポート機能: 小売店の経営支援、店頭レイアウトや陳列の支援、販売員教育支援をする。
売上金の回収方法は、取引先によってまちまちである。
諸経費の高騰、人材の確保、賃金上昇、粗利益率の低下、売上高の伸び悩みなどから、業界に対して戦略的な組織構造の転換をマネジメントする態勢の確立が絶対条件となる。
大卸業者は全国的な販路を有し、各地方卸売業を取引対象にしている。これに次ぐ大規模問屋は地区的な仲卸業者を主体とし、北海道・仙台・東京・大阪・名古屋・福岡などに各数件ほどある。さらに、一般問屋が一定地域内の菓子小売を対象とする普通菓子卸売店を有する。
1.帝国データバンク『第64版全国企業財務諸表分析統計』2020年度・2021年11月発行(菓子・パン類卸売業)によれば、売上に関する主な指標は次のとおりである。
1人当たり売上高 109,187千円
売上高増加率 ▲6.38%
2.卸売業者を訪問することで売上関連の数字を把握する。その数値が業界平均を下回る場合には、その要因と対応策を聞く。
1.前掲『第64版全国企業財務諸表分析統計』によれば、採算に関する主な指標は次のとおりである。
総資本経常利益率 ▲0.22%
売上高総利益率 20.42%
売上高営業利益率 ▲3.87%
売上高損益分岐点倍率 1.03倍
2.上記データを比較して経営者等にヒアリングを行う。業界平均を下回る場合はその原因と対応策を聞く。
前掲『第64版全国企業財務諸表分析統計』によれば、効率性・安定性に関する主な指標は次のとおりである。
総資本回転期間 7.71月
固定資産回転期間 2.72月
自己資本比率 16.30%
流動比率 294.55%
1.環境や販売先顧客の変化に対応して、企業収益を向上させる方法に取り組むようにしているか。得意先別、商品別の物流コストの把握、分析等を行っているか。
2.伝統型問屋からの脱皮を図っているか。
3.小売店が不振となった原因を小売店だけの問題とせず、部分的にせよ、その店に必要な売れ筋商品、経営情報などを絶えずタイムリーに提供しているか。
4.新たな得意先開拓に戦略的に取り組んでいるか。
小売店が商品を消費者に的確にアピールできるようにするマーケティングやコピーライティングの技能を自ら学び、またそのことを教授できる事業者を小売店に紹介するなどの展開が考えられる。
キャッシュレスPOSレジやECサイトでの販売など、小売店でのIT化が猛烈な勢いで進行している。IT業者からは様々な提案が発せられているが、必ずしもまだ小売店に届いていない。新たな商材としてこれらのIT製品を、分かりやすく小売店に紹介する事業が考えられる。
主要販売先は菓子専門小売店だが、小売店はスーパーマーケットとコンビニエンスストアに押され、厳しい経営を強いられている。中間流通機能の評価・見直しと再編機運が高まっており、今後も淘汰が予想される。
1.販売、回収条件、仕入面は比較的優位にあるものの、反面売込競争が激化し、売掛金の回収がおろそかになる傾向もあるのでチェックを要する。
2.売掛金残高の推移に注目する。
3.返品率、不良品および売れ残り品に注意を払う。
4.上昇する人件費、運送費などの諸経費の吸収策について配慮する。
5.手元資金と在庫残高との見合いから、売上入金、支払決済金、在庫資金の流れをチェックする。
設備資金需要の主なものとしては、倉庫の拡張、設備の近代化資金が挙げられる。商品数は増え続けており、消費者の求める商品をスピーディーに小売店に届けるためには、倉庫の大型化と入出荷管理の迅速化が求められている。
日本政策金融公庫 企業活力強化資金、セーフティネット貸付
商工会など(日本政策金融公庫) マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
調査年 項目 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
|
収益性 |
総資本経常利益率 |
0.74% |
1.38% |
▲0.22% |
売上高総利益率(粗利益率) |
19.83% |
20.87% |
20.42% |
|
売上高経常利益率 |
0.12% |
0.23% |
▲1.67% |
|
売上高営業利益率 |
▲0.14% |
▲0.01% |
▲3.87% |
|
売上高金利負担率 |
0.36% |
0.30% |
0.40% |
|
効率性 |
総資本回転率 |
2.74回 |
2.70回 |
2.30回 |
売上債権回転期間 |
1.46月 |
1.41月 |
1.31月 |
|
棚卸資産回転期間 |
0.53月 |
0.61月 |
0.76月 |
|
買入債務回転期間 |
1.20月 |
1.11月 |
1.09月 |
|
安定性・流動性 |
自己資本比率 |
21.24% |
19.90% |
16.30% |
流動比率 |
200.38% |
212.35% |
294.55% |
|
固定長期適合率 |
50.52% |
54.48% |
46.77% |
|
成長性・生産性 |
売上高増加率 |
1.99% |
1.47% |
▲6.38% |
経常利益増加率 |
0.25% |
▲2.29% |
▲107.99% |
|
1人当たり売上高 |
117,655千円 |
119,041千円 |
109,187千円 |
|
採算性 |
売上高損益分岐点倍率 |
1.08倍 |
1.07倍 |
1.03倍 |
集計企業数 |
161社 |
163社 |
173社 |
資料:帝国データバンク『全国企業財務諸表分析統計(第62〜64版(2019〜2021年発行))』(菓子・パン類卸売業)