景気予測お天気マーク
このシグナルは、現状から今後6ヵ月間の見通しを短評。
大工工事業 |
許可業者数 |
対前年伸び率 |
全業種対前年伸び率 |
2018年度 |
73,263 |
2.4% |
3.0% |
2019年度 |
74,775 |
2.1% |
2.8% |
2020年度 |
76,048 |
1.7% |
2.0% |
資料:国土交通省『建設業許可業者数調査の結果』(2021年5月公表)
(※)1社が複数の建設業許可を取得することができるため、企業の増減数と一致しないことがある。
1.木造住宅の大工は職人仕事だが、近年は若者に敬遠されて高齢化が進んでいる。木造住宅の総需要が減少する中で人件費の高止まりもあり、経営環境が年々悪化している。
型枠大工工事も大きな業界で、業界団体の(一社)日本型枠工事業協会には626社が加盟している(2018年11月1日現在)。型枠大工工事はコンクリート建築の中で大きな役割を果たしており、工事コスト上、躯体工事の40〜45%を占める。
2.建築工事は9割以上が民間発注工事であり、景況に大きく左右される。また、プレカット木材の利用を増やすなど低い技術で施工できるようにしたことで、他業種からの職種転換のハードルは下がっている。しかし、高い技能を持った職人は高齢化し、高い技能を求める若年層の入職が不足している状況は続いているため、業界の将来性は不安要素も多い。
3.2020年10月の建設業法改正で建設業許可を取得する際の経営業務管理責任者の要件が緩和された。
4.2020年後半からアメリカや中国での住宅建築需要が回復して、木材など建材の高騰(ウッドショック)を招いたことで、材料費の割合が多い建設会社では収益性に悪影響を及ぼしている。
5.日本人の若手入職者が少ないため、外国人技能実習生を採用している業者も多い。2020年は新型コロナウイルス感染症のため入国者は減ったが、実習生の総数は増加している。
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2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
前年度比 |
構成比 |
建築物計 |
131,079千㎡ |
124,938千㎡ |
114,300千㎡ |
▲8.5% |
100.0% |
|
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
前年度比 |
構成比 |
公 共 |
5,889千㎡ |
5,844千㎡ |
5,623千㎡ |
▲3.8% |
4.9% |
民 間 |
125,190千㎡ |
119,094千㎡ |
108,676千㎡ |
▲8.7% |
95.1% |
|
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
前年度比 |
構成比 |
居 住 |
80,063千㎡ |
76,959千㎡ |
69,378千㎡ |
▲9.9% |
60.7% |
非居住 |
51,016千㎡ |
47,979千㎡ |
44,921千㎡ |
▲6.4% |
39.3% |
|
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
前年度比 |
構成比 |
木 造 |
55,935千㎡ |
54,830千㎡ |
49,775千㎡ |
▲9.2% |
43.5% |
非木造 |
75,144千㎡ |
70,107千㎡ |
64,525千㎡ |
▲8.0% |
56.5% |
資料:国土交通省『建築着工統計調査報告』(2020年度分)
大工工事業には木造住宅の大工工事のほかに、コンクリート工事の際に型枠を作る型枠大工工事がある。木造住宅の大工工事の需要は新築住宅の着工件数に左右され、型枠大工工事の需要はコンクリート工事の件数に左右される。
大工工事業 |
建設業 就業者数 |
従業者数 |
常雇等 |
臨時・日雇 |
労務外注 労働者数 |
2019年度 |
42,267 |
38,519 |
36,837 |
1,682 |
3,748 |
構成比 |
1.4% |
1.4% |
1.3% |
2.1% |
2.2% |
前年度比 |
▲10.6% |
1.7% |
0.8% |
29.3% |
▲60.2% |
資料:国土交通省『建設工事施工統計調査報告』(2019年度実績)
大工工事業 |
総数 |
民間発注工事 |
公共発注工事 |
|
2017年度 |
元請完成工事高 |
108,758 |
101,760 |
6,998 |
前年度比 |
▲5.5% |
▲7.6% |
42.7% |
|
2018年度 |
元請完成工事高 |
152,156 |
144,452 |
7,704 |
前年度比 |
39.9% |
42.0% |
10.1% |
|
2019年度 |
元請完成工事高 |
123,438 |
118,321 |
5,117 |
前年度比 |
▲18.9% |
▲18.1% |
▲33.6% |
資料:国土交通省『建設工事施工統計調査報告』(2019年度実績)
大工は歴史的に古くからあり伝統的職人といえる。どちらかといえば零細企業として推移してきたが、建築規模の拡大、設計技術の高度化、建築様式の多様化などの結果、分化してきている。つまり、資力、設計技術を持った者はいわゆる工務店と称する元請業者となり、資力、設計技術のない者はこれに従属する下職大工となった。
戦前は、徒弟制度として行われ、親方の家に寝起きしながら腕をみがき、1人前になってもお礼奉公としてある期間勤め上げた。戦後は、時代風潮もあって、弟子的観念というよりは従業者としての意識が強く、親方についてその技術を吸収し腕をみがくといった昔気質はなくなった。その結果、一とおりの技術を身につけてしまうと、その腕を頼りに金銭的に高いほうへ移り歩くという傾向ができている。
1.国土交通省『建設工事施工統計調査報告』(2019年度実績)(2021年3月公表)(大工工事業)によれば、次のとおり。
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2018年度 |
2019年度 |
||||
完成 |
元請完成 |
下請完成 |
完成 |
元請完成 |
下請完成 |
|
金額 |
791,330 |
152,156 |
639,174 |
636,518 |
123,438 |
513,080 |
元請比率 |
- |
19.2% |
- |
- |
19.4% |
- |
前年度比 |
▲2.2% |
39.9% |
▲8.7% |
▲19.6% |
▲18.9% |
▲19.7% |
|
計 |
労務費 |
人件費 |
租税公課 |
営業損益 |
|
2018年度 |
金額 |
224,724 |
63,890 |
114,238 |
6,139 |
40,457 |
前年度比 |
15.0% |
26.1% |
1.5% |
27.1% |
47.6% |
|
2019年度 |
金額 |
206,344 |
47,628 |
112,121 |
7,714 |
38,880 |
前年度比 |
▲8.2% |
▲25.5% |
▲1.9% |
25.7% |
▲3.9% |
資料:国土交通省『建設工事施工統計調査報告』(2019年度実績)
2.帝国データバンク『第63版全国企業財務諸表分析統計』令和1年度・令和2年11月発行(大工工事業)によれば、売上に関する主な指標は次のとおりである。
1人当たり売上高 48,260千円
売上高増加率 7.32%
1.前掲『第63版全国企業財務諸表分析統計』によれば、採算に関する主な指標は次のとおりである。
総資本経常利益率 2.29%
売上高総利益率 27.45%
売上高営業利益率 ▲0.25%
売上高損益分岐点倍率 1.06倍
2.採算については、手間賃収入が主体であるので、効率のよい仕事さえしていれば安定した業種といえる。
1.経済的環境の変動に対する即応能力が弱い個人経営が主体であるが、業歴が長い場合には個人資産の蓄積はどの程度あるか。
2.昔気質の人が多く技術中心であるため、金銭感覚に弱い場合も多い。配偶者が管理している場合が多いので配偶者がしっかりしているか。
1.大工工事業者の中には、専門工種の他に類似する工種まで幅を広げる多能工化に取り組んでいる業者も増えてきている。工種の幅が広がったことをアピールすることも含めて、これまで取引していなかった建設会社などへの紹介もビジネスマッチングの支援となる。
2.下請で工事を受注することが多かった専門工事業者の中には、受注する工種の幅を広げながら元請で受注する割合を高めるケースも増えてきている。そういった専門工事業者への紹介もビジネスマッチングとしては有効な支援になる。
3.元請で工事を受注する方策の一つとして、大手不動産会社などが力を入れているインターネットを利用したリフォーム工事の集客を活用するケースがある。しかし、加盟料やサービス利用料などの固定費が増えるだけでなく、複数社による相見積や契約時の手数料が掛かるため粗利益は下がる傾向にある。また、安値を目的とした一般消費者が多いことからトラブルも生じやすく、代金回収が難しいことも少なくない。
4.主に下請で大工工事を受注していた会社は、これまで工務店や建設会社から引き合いを貰い、工事現場で作業をしていた。近年は、内装工事業者や外装・外構工事業者の中にも営業力を高めて、下請に発注するところも増えてきている。そのような横のつながりを紹介することで、木造建築工事業者の販路を広げる効果も期待できる。
5.一方、近年は改修・リフォーム工事の集客としてインターネットを利用したサービスが、大手不動産会社などを中心に広がっている。営業力の弱い大工などが元請受注を増やすために利用したいと考えるところも多い。しかし、加盟料やサービス利用料などの固定費が増えるだけでなく、複数社による相見積や契約時の手数料が掛かるため粗利益は下がる傾向にある。また、安値を目的とした一般消費者が多いことからトラブルも生じやすく、代金回収が難しいことも少なくない。
1.経営者や営業担当者が引合や受注の増加を意識し、積極的に営業に取り組んでいること。
2.安定して受注できる工事量は、自社で施工できるだけの職人が確保できていること。
3.引合情報が判り易い状況で把握できていて、先々の受注見込が明確であること。
4.工事毎の粗利益が把握できる体制があり、振り返りなどの改善に活かしていること。
5.資金繰りが把握できる体制があり、早めに資金調達の対策が打てる状態であること。
配下の大工はほとんどが日給制で、月2回、15日と月末に支払う場合が多い。配下大工の中には前借りを申し込んでくる場合があるが、大工職人の引止め策として対応が必要となる。こうした立替資金需要はあるものの、借入申込となることはまれである。融資は、金銭的にも少なく、短期の取扱いとなる。
資金需要としては、機械工具や車両運搬具の購入資金程度である。大口の資金需要となった場合には、焦げ付き債権の発生、経営者個人の投資資金などの場合があるので、充分に注意する必要がある。
〈国土交通省関係〉
地域建設業経営強化融資制度
下請セーフティネット債務保証事業
下請債権保全支援事業
調査年 項目 |
平成29年度 |
平成30年度 |
令和1年度 |
|
収益性 |
総資本経常利益率 |
2.09% |
2.55% |
2.29% |
売上高総利益率(粗利益率) |
27.35% |
27.96% |
27.45% |
|
売上高経常利益率 |
0.81% |
1.30% |
0.86% |
|
売上高営業利益率 |
▲0.04% |
0.10% |
▲0.25% |
|
売上高金利負担率 |
0.51% |
0.46% |
0.45% |
|
効率性 |
総資本回転率 |
2.38回 |
2.34回 |
2.27回 |
売上債権回転期間 |
1.17月 |
1.17月 |
1.20月 |
|
棚卸資産回転期間 |
1.01月 |
0.96月 |
0.99月 |
|
買入債務回転期間 |
0.72月 |
0.68月 |
0.68月 |
|
安定性・流動性 |
自己資本比率 |
8.41% |
10.42% |
13.13% |
流動比率 |
222.27% |
212.07% |
237.87% |
|
固定長期適合率 |
51.67% |
50.40% |
52.60% |
|
成長性・生産性 |
売上高増加率 |
5.73% |
9.74% |
7.32% |
経常利益増加率 |
43.23% |
63.55% |
51.75% |
|
1人当たり売上高 |
46,034千円 |
46,394千円 |
48,260千円 |
|
採算性 |
売上高損益分岐点倍率 |
1.07倍 |
1.08倍 |
1.06倍 |
集計企業数 |
1,308社 |
1,343社 |
1,233社 |
資料:帝国データバンク『全国企業財務諸表分析統計(第61〜63版(平成30〜令和2年発行))』(大工工事業)