卸売業ガイダンス |
業界総括
現状の業界動向
- (1)新型コロナウイルスの影響からは回復の兆し、ただしウクライナ問題や為替を注視
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経済産業省『商業動態統計』によると、卸売業全体の2022年4月の販売額は35兆4,100億円であり、前年同月比6.7%の増加、季節調整済前月比では▲1.3%の低下となった。世界的な新型コロナウイルスの沈静化を受け、マクロの経済環境としては回復基調になったと見てよいだろう。
- (2)サプライチェーンの混乱や円安・原油高の同時進行を注視
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一方で、ウクライナ問題等に起因するエネルギー原料や穀物、鉱山資源などの供給減を受けて、食品・電機電子卸売などでは商品不足が一層顕著になっている。加えて、日米金利差を背景とした歴史的円安や原油高も同時進行しており、輸入型の卸売事業者にとっては調達の負担が増大している。大手商社やメーカーは引き続き値上げなどの対応を進めており、中小事業者への影響も一層強まると見込まれる。
- (3)脱炭素をはじめとするESGを機会としてとらえる
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2021年度は、世界的な脱炭素化の動きが進む中、国内でも政府が脱炭素への取組みを宣言したことで、大手総合商社では石炭火力・石油関連の事業から撤退する動きがみられた。その動きが一巡しつつあることもあり、昨今では脱炭素に伴って生じる商材やサプライチェーンの変更を機会として新規の商材や取引先開拓を試みる動きがある。例えば三菱商事は、CCU(CO2の有効利用=カーボンリサイクル)に着目し、専門組織であるCCUタスクフォースを構築し、新規事業・新規商材の開発に取り組んでいる。ESG関連のリスクに確実に対処することはもちろんだが、そのうえで、今後は産業構造の変化を好機と捉えて売上増につなげるための取組みが必要となるだろう。
- (4)「在庫削減」「ジャストインタイム」を見直す動き
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地政学的なリスクの高まりや災害の増加を受けて、従来の在庫削減やジャストインタイムの思想に基づく物流の設計が見直され始めている。例えば、米ウォルマートが、決算にあたり前年よりも在庫が増えたことをポジティブな変化として開示するなど、商品の安定供給・機会損失削減のために在庫を確保しようという動きが出ている。適切な在庫量の確保は金融機関にとっても融資拡大の商機となりうるため、取引先の動向を確認したい。
- (5)産業・サプライチェーン規模のDXを推進
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受発注システムや電子商取引の導入、EC化などに取り組む事業者は多いが、昨今ではさらに踏み込んで、デジタル技術を活用した顧客企業のサポートを行う事業者も現れている。例えば、大手化学材料卸である長瀬産業は、新しい化学素材の開発をデジタルで効率化する「マテリアル・インフォマティクス」に取り組んでおり、IBMと協働でバイオ素材メーカー向けの材料探索プラットフォームを開発し、取引先の事業者に提供している。
今後(2022年11月頃まで)の見通し
- (1)引き続き為替・物価動向を注視
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今後も、ウクライナ問題等に起因する世界的なインフレーションが続き、各国の金融政策の方針次第では一層の円安が進むリスクがある。特に輸入系の商社においては、為替や物価動向をチェックし、適切な価格転嫁が行われているか、運転資本が健全に保たれているか、といった事項に気を配る必要がある。
- (2)脱炭素などESG関連の機会をとらえる準備と政府動向の確認
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脱炭素化の動きに伴い、特に化学や電機、エネルギー関連の領域では、商材の変更などが生じる可能性がある。今後需要が増える商材・減る商材を早めに見極め、必要に応じて新たな調達先を開拓するなどの先手を打つことが求められる。また、今後の補助金の動向などを見定めるために、政府で2022年度末をめどとして方針・施策の検討を進めているグリーン成長戦略の議論の動向も確認しておくべきである。
- (3)サプライチェーンの見直し・変更や在庫水準を確認
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為替変動や供給減に伴う欠品や仕入れ値の上昇に対応するため、調達ルートの変更の可能性についても注意しておく必要があろう。また、各社とも商材の市場動向や取引先の動きを見つつ、適切な在庫量の維持にも注意しておく必要がある。
取引深耕のポイント
- ①
- 原料の値上がりや欠品等の調達リスクはないか、在庫量や運転資本に問題はないか。
- ②
- リテールサポート等、顧客にとって必要不可欠な独自価値を提供できているか。
- ③
- M&Aなどによる通じた物流・取引の効率化や業容拡大の機会を十分に検討できているか。
- ④
- リモート商談、電子商取引やECの構築など、オンラインを前提とした新たな商談・取引フローを確立できているか。
- ⑤
- 環境・社会的要因に関連するビジネスの機会・脅威の把握と、機会への投資やBCP対策は十分か。
- ⑥
- IT化・デジタライゼーションへの対応は十分か。