企業の融資審査は「財務分析」が基本ですが、新規開拓及び既存取引において、実際に企業から入手できる決算書等の財務情報は、早くても決算期末から3カ月後の“過去”の情報です。そして時間のギャップを埋めるための試算表や資金繰り表も、直近とはいえやはり過去の情報に基づいており、これらの過去情報から当該企業の将来の返済能力を導き出すには飛躍があります。そこで重要視されるのが、過去データと将来予測とを橋渡しする“今”の状況判断です。昨今の激変する経済環境下、たとえ1カ月後の企業状態すら予測するのが難しい状況を見れば、融資審査において企業の“今”を判定するノウハウ(=企業観相術)の習得が重要なことは論を俟ちません。
本書は、融資審査に必須の企業の現況を把握するために、担当者が身につけるべきノウハウを満載しました。財務データや書類だけにとらわれず、担当者自身の五感を活用することによって企業の真の姿を見極め、的確な信用判定につなぐ力が身につく、融資担当者必携の書です
定性面の中小企業信用判定ノウハウが満載
●収集した企業情報の質と量に差がつく
財務情報のみによる信用判定では正しい審査結果が得られるとは限りません。本書は財務情報を補完し、さらに企業の核心に迫るための“今”の情報収集・分析のノウハウを満載しました。良質な情報を多数蓄積することで、的確な融資審査が可能となります。
●豊富な事例・話法・参考知識
有用な情報を数多く入手するには、担当者自身の五感をフル活用したうえでの上手な話題の切り出し方も重要となります。本書では、情報収集に有効な実例や話法例、予備知識を随所に掲げ、より理解が深まり、実践に活用できるように構成しました。
●行内・店内研修にそのまま活用可能
本書は、某金融機関の某営業店における「融資推進」についての店内勉強会をベースに論が進んでいきます。企業観相術を身につけるための問題意識から解決法までが記載されていますので、本書を研修用教材としてそのままご活用いただけます。
<目次>
序 章 企業観相術とは
第1章 企業観相術
第1節 業界動向をつかむ
第2節 売上高をつかむ
第3節 損益状態をつかむ
第4節 資金繰りをつかむ
第5節 金融機関取引をつかむ
第6節 経営者を観察する
第8節 生産現場を観察する
第9節 不動産を調査する
第2章 企業観相術による融資審査
第1節 3分間判定法
第2節 融資受付
第3節 取引先の危険信号を知る
第4節 融通手形を見破る
第5節 信用判定とメリット判定
第3章 金融機関職員としての工場の見方
第1節 工場見学の事前調査
第2節 工場見学の実施
第3節 在庫の調査
第4章 シンポジウム 業績アップの秘策
■"受け身"から"仕掛け"へ
■決算月一覧表で資金セールス
■調書更新・中間チェックは保全チェックにとどめるな
■取引方針の見直し徹底
■設備情報を見落とすな、聞きもらすな
■資金セールスの申し合わせ
■知恵を貸し、金を貸せ
■ベンチャー融資のポイント
■企業観相術を身につけよ
■融資セールスの心得(支店長訓示)
依馬 安邦 著
A5判・並製・208頁・平成21年1月発行