金融機関の役職員による不祥事は後を絶ちません。発覚する確率は高く、手を染めた個人には厳しい刑罰・処分が課せられ、金融機関への信頼を失墜させることが明白です。また、金融機関の内部監査態勢は格段に向上しているにも拘わらず、不祥事は一向に減ってはいません。
本書は、実際に発生した不祥事件を題材に、そこから得られる管理の盲点をまとめた第2巻です。このドラマを読むことによって、どの段階で予防手当てを行えば防止できたかがよく分かります。内部監査体制の強化とは、不正事件を検査で摘発するのではなく、未然予防に大きな狙いがあります。本書は13のドラマで事件の初期段階、更に深みに入ってく段階、もう後戻りが出来ない段階が描かれており、初期段階で食い止めることが職場責任者に求められます。金融機関役員、部店長、課長クラス必読書です。
不祥事には不正が出来る職場環境の是正が大事
●部下任せが不正の発覚を遅らせる
金融機関の不祥事は、「部下に任せきり」「一定ポストが長い」という人事管理上のミスが圧倒的に多く報告されています。特に専門分野で他に代わり手がいない場合、このドラマは不正は起こるべくして発生していることを示唆しています。
●軽い気持ちの寸借りが公金横領
「軽い気持ちの寸借り」が使い込みに発展するケースが圧倒的に多いと報告されています。最初の寸借り段階での予防が大事か、寸借りするという生活の乱れをどうチエックするかが管理職に求められます。
●13ケースを収載
各本書が取り上げたのは不正融資、横領・着服、癒着、情報流出等の13事例。現場感をリアルに再現したので営業店管理者にはこのドラマを読むことで、どのような場面で何をチエックすればよいかが自ずと理解できます。
(目次)
第15話 大手都市銀行を揺るがす巨額不正融資事件
-ブラックボックスだった外国為替―
第16話 農協ベテラン女子職員による巨額不正融資事件
-融資先の監査役になっていた女子職員―
第17話 ワンマン体制下の地域金融機関を舞台にした見せ金増資事件
-ワンマンの暴走と取締役の重い責任―
第18話 内部管理態勢の不備が引き起こす相次ぐ横領・着服事件
-派遣女子行員に対する甘い人事管理―
第19話 たわいのない会話に端を発した大規模な取り付け騒ぎ
-実際に起きたデマによる大パニック―
第20話 県幹部職員の不正借入れを契機とした金融機関の破綻事件
-地方公共団体と金融機関との難しい関係―
第21話 定期的な行内検査でも見逃された巨額横領事件
-金庫に木片を積み上げ検査異常なし―
第22話 厳重なはずのセキュリティが短時間で破られたオンライン詐欺事件
-なりすまし振込みを許した厳重セキュリティ―
第23話 反社会的勢力に対する巨額不正融資事件
-頭取スキャンダルが招いたモラル大崩壊―
第24話 社会的モラルが問われた支店長の不祥事件
-支店長によるストーカー規制法違反―
第25話 トップバンクの名ディーラーが起こした巨額為替損失事件
-優秀な銀行員の悲劇を生んだ合併―
第26話 取引先の社会的問題の発生と法務対応
-耐震偽造関連報道と取引銀行の業務処理―
第27話 渉外社員による高齢者資産の着服事件
-高齢者社会における渉外管理ノウハウ―
(第1巻目次)
第1話 ベテラン女子行員が起こした計画的横領事件
第2話 信頼篤い役席者が起こした証券偽造等による巨額横領事件
第3話 野放しトレーダーが起こした巨額損失事件
第4話 支店長らによる巨額預金証券偽造事件
第5話 都市銀行行員による顧客殺人事件
第6話 派遣行員による巨額着服事件
第7話 特別保証制度を利用した自行プロパー融資の旧債振替
第8話 採用担当者による個人情報の悪用事件
第9話 頭取が目論んだ不祥事隠蔽事件
第10話 女子職員によるATM現金着服事件
第11話 退職行員による偽造キャッシュカード現金引出事件
第12話 理事が犯した巨額詐欺・横領事件
第13話 内部牽制機能の不備が招いた支店長の不祥事件
第14話 真面目で優秀な若手女子行員が起こした巨額横領事件
井上 享 著
B6判・並製・224頁・平成22年12月発行