コロナ禍の影響を大きく受けている中小企業・小規模企業は多いものの、ゼロゼロ融資を始めとする各種の金融支援のおかげで事業を継続できている先は相当数あるものと考えられています。ゼロゼロ融資の5割は22年半ばには返済開始とされていますが、「事業再生」のような抜本的な取組みを行わない限り、返済原資を捻出できない企業も相当数にのぼるものと思われます。
ただし、「事業再生」といっても、コロナ禍からの事業立て直しを模索するならば、バブル崩壊後の事業再生で見られたような「B/S再生」(資産や事業の売却により債務超過を解消)ではなく、「P/L再生」による収益力改善や、資金繰り改善による返済原資確保という取組みが重要になります。また、こうした収益力改善等は、再生段階には至っていない企業に対する経営改善支援においても行うべき取組みであり、融資先と向き合う金融機関の担当者は、その具体的な方策を理解しておく必要があるでしょう。
本書はポストコロナ・ウィズコロナの経営環境での債権管理や事業再生支援に役立つよう、「P/L再生」の観点から事業再生を行った実例をもとに事業再生のノウハウを解説しました。幅広い業種から事例を集めましたので、コロナ融資先の収益力改善等に取り組む営業店および本部担当者のご活用を強くお勧めします。
実例をもとに事業再生の具体的方法を業種別に解説
●身近な企業の支援のヒントが満載
掲載事例は店周にある代表的な業種の中からセレクトし、企業規模も中小企業・小規模企業に限定しています。本書1冊があれば、身近な企業の経営支援や再生支援における初動対応から具体的なアクションまでのヒントを得ることができます。
●実例ベースの29事例を掲載
本書に掲載した全29事例は、いずれも執筆者が支援を行った実例をベースに組み立てたものです。こうした「実際の再生支援事例」を通じて、取引先企業に対する再生支援の考え方や方向性、取るべき行動等のヒントを得ることができます。
●再生支援の基礎知識も提供
金融機関が相応の負担を負う「再生支援」の局面では、各利害関係者との調整や金融機関の資産査定における適切な取組みなど、担当者として知っておかなければならない実務が多数あります。本書はこうした再生支援の基礎部分についても詳しく解説しました。
大阪府中小企業診断協会 編著
A5判・並製・288頁・2022年5月発行