~新たなる金融調整手法の登場~
「中小企業金融円滑化法」(当時)はリスケジューリングによる企業救済・再建で一定の成果を上げましたが、一方で「リスケの繰り返しで経営改善が進まず、不採算事業は温存されたまま」という企業も相当程度産み出しました。しかし、「ダメな会社は潰してしまって、融資の貸倒れ分は引当金を使って無税償却で経費処理」といった安易・ドラスティックな手法を取ることができないのが地域金融機関であり、結果として過大な負担を強いられていると考えられます。この、いわゆる「出口問題」を解決する1つの手段として登場したのが、法務省が2017年2月に認証した「企業再建ADR」という仕組みです。
本書はこの仕組みの全体像を明らかにし、実際の手続手順を詳しく解説するものです。金融機関の本部担当部署はもちろん、営業店にも常備しておくべき1冊です。
小規模企業再建の出口戦略に有効活用
●新たな金融調整手法の登場
企業再建ADRは、中小企業再生支援協議会や、特定調停などの法的仕組みを担っている簡易裁判所などを補完し、かつそれらと協調するスキームを提供しますが、その特性から、従来は実現できなかった金融調整方法を実現します。すなわち誰も描けなかった「出口戦略」を本書は提供します。
●全関係者が利益を享受する関係に
中小企業支援を自らの存続基盤を脅かすことなく実現したい地域金融機関、債務超過に悩む経営不振の中小企業、破産の恐怖に怯える経営者や家族、失業を恐れる従業員、連鎖倒産のリスクを回避したい取引先、こうした全関係者に利益をもたらす関係になるスキームが企業再建ADRです。担当者の有効活用が求められます。
●制度活用マニュアルとしての1冊
本書は企業再建ADRの事業主体自らが、仕組みと活用法を解説するものです。具体的な活用シーンの紹介や細かな規程の解説を行っていますので、本書はいわば「制度活用マニュアル」として利用可能です。
■企業再建・承継コンサルタント協同組合(CRC)/中小企業経営再建紛争解決センター 著
A5判・並製・176頁・平成29年11月発行